
ドイツ・ルネサンスの巨匠デューラーは、素晴らしい油彩画や壁画のほか、水彩画にもすぐれた作品を残した。
しかし膨大な数の木版画や銅版、ドライポイントの緻密な仕事も忘れてはならない。
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この謎めいた図像に満ちた魅力的な「メランコリア」はそのデューラーの銅版の代表作。
タイトルからして、なかなか謎めいているのだが、「メランコリアT」の「T」というのが、そもそも何の事か分からない。
「T」というからには、「U」もあったのだろうか。それとも何部作かのうちのひとつなのだろうか。
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この絵の、座って考え事をしているのは、背中に羽があるところから私は単純に天使だと思っていたけれども、渋沢龍彦が「羽根の生えた女性」と記述しているところを見ると、天使ではないらしい。
いずれにしても、この人物が考え事をしているのは、タイトルの「メランコリア」から来ている。
「メランコリア」とは、憂鬱質という意味で、当時人間の性格は4つに分かれているとされており、憂鬱質はそのひとつであった。この作品に謎めいた形で登場している一つ一つのマテリアルは、この憂鬱質を表わしているともいわれる。
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しかし、魔方陣、球体、人物が手に持ったコンパス、天秤、砂時計…これらの魅力的なマテリアルを、それぞれ好き勝手に解釈して楽しむのもまた一興だと思う。
こういう絵は、あまり四角四面な解釈を施されて、そうですかと納得するより、自分であれこれ考えつつ想像するところに、見る楽しみがあるように思うのだ。
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デューラーは見事な自画像も有名である。これは自分をキリストに模した「1500年の自画像」。

真正面を見据えた構図で、己を大胆にもキリストに模す。29歳のデューラーの自信にあふれた図だけれども、単なる自信過剰ではなく、巻き毛の描写、毛皮の質感など、確かな観察力と表現力で、格調の高い、説得力に満ちた、迫力ある画面に仕上げているのが、すごいところだ。
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