Antea
Parmigianino

04/3/10記
アンテアの肖像
この絵はパルミジャニーノという、「凸面鏡の自画像」という絵で知られている、マニエリスム時代の画家の描いた女性の肖像。彼の妻だったとか、愛人だったとか言われている婦人の像である。
私はこの絵の実物を、展覧会で見ている。
その時に買った絵葉書をスキャナーでスキャンした画像がこれなのだ。確かこの絵の実物はナポリ美術館だかにあるのだった。そうであれば、私は一生この絵の実物を見ることは出来なかっただろう。展覧会で京都にやって来て、見ることが出来たのは非常な幸福だったと、その時嬉しかったことを覚えている。
実物を見る前に、この絵の存在は知っていた。
マニエリスム3羽ガラスのひとり、パルミジャニーノの絵に関しては、かなり知識があったからだろう。どこかで見て、知っていたのだ。鬼面人を驚かす、奇想の画家が多いマニエリスムの絵の中で、この絵は何の変哲もない肖像だ。
暗い背景からぼうっと浮かび上がるメランコリックな女性は、硬い表情で、どことなしか怯えたような様子でさえあるが、それと、胸に置かれた手の表情がわずかに何ごとかを語っているようであるほかは、どこにも意表を突いた突飛なものは感じられない。落ちついた、まるでレオナルドの円熟期を感じさせるような画想ではないか。
とてもマニエリスムとは思えない。
そこが私の記憶に残ったのだろう。実物の絵を見ていつも感じることは、画集で見ているよりもずっと画調が落ち着いているということだ。
画集で見る絵画は、絵の細部までもれなく表現しようとして、どうしても実物よりどぎつい色調になっている。
実物を見ると、いつもとても落ちついていて、画集で見るよりずっといいなと思う。この絵もそうだった。
背景がとても暗く、殆ど単色のような、落ち着いたというより、暗いという方が正しい画調。
そこからおのづと、格調の高さが漂っている。私がマニエリスムに対して持っていた、怪しげでいかがわしい、というイメージとはかけ離れていた。
確かに絵としては硬すぎるのかもしれない。
それでもこの断固とした、きっぱりしたゆるぎのなさは、私には驚きであり、新鮮で新たな発見であった。マニエリスムという絵画運動が、決して時代の仇花などではなく、また突出して起こったものでもなく、ルネサンスの続きというか、ルネサンスという時代に続いて、その続きに流動して自然に出て来たもの、という、ルネサンスから続く画家たちのごく自然な絵画の帰結点であったことがまざまざと分かったのだ。
やはり実物を見なくては何ごとも分からないものだ、と改めて感じ入ったことだった。
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